韋應物の詩「秋夜寄丘員外」を読む
秋夜寄丘員外 韋應物
懷君屬秋夜, 君を懐いて 秋夜に属す、
散步詠涼天。 散歩して 涼天に詠ず。
空山松子落, 山空しくして 松子落つ、
幽人應未眠。 幽人応に未だ眠らざるべし。
君を想う、この秋の夜。そぞろ歩いて涼しい夜空のもと詩を吟ずる。人気のない山中に、ときおり松かさの落ちる音が聞こえるだけ。幽人の身である君も、今ごろはまだ眠りについていないことだろう。
韋應物は、中国唐(中唐)の詩人。786年には蘇州刺史になり韋蘇州とも呼ばれます。
自然を詠う詩に巧みで、とくに自然の静けさや穏やかさを主題とするものに秀でています。盛唐の孟浩然や王維を受け継ぐとされ、柳宗元も一括して“王孟韋柳”と並称されます。
この詩は、題にあるように秋の夜に友人邱丹(員外は職名)を想って書かれた詩です。
奇をてらった表現はありませんが、素朴で静かな表現の中に友を想う情感が濃くにじみ出ています。
詩人にとって、或いは文化人にとって、共通の話題で語り合える友の存在は、貴重です。ふと、友の意見を聞いてみたくなることがある。しかし、その友はそばにいない。そうしたとき、友の存在の大きさに気づき、そばにいない寂しさを痛切に感じるのではないでしょうか。
インターネットで簡単に世界中の人とつながれるようになった現代においても、知音を得ることは、そう簡単ではないと思います。
この冬、本来であれば日本に帰り、参禅する予定でした。今は一人、異国の地で禅を組みます。
今日は、韋應物の詩を改めて読んでみました。
かはたれに消えては浮かぶ想念を ふうと吐き出し足を組みたり cogito