王維の詩「雜詩」に思う
雜詩 唐・王維
君自故鄕來, 君 故鄕 自(よ)り 來たる,
君は故郷から来たゆえに、故郷の様子はご存じだろう。君が来るとき、我が家の窓辺の梅は、すでに花をつけていただろうか。
「雜詩」は、唐の詩人王維の五言詩で「五言三首」の第二首にあたる詩です。 この詩は、前二句で故郷から来た友人に問いかけ、後の二句でその内容が示されます。それは故郷の家の窓辺の寒梅はすでに咲いただろうか、というもの。詩人の故郷に寄せる思いが、この問いに凝縮され、素朴な中に深い味わいを感じさせます。
この詩の鑑賞にあたっては、初唐の詩人王績の詩「在京思故園見郷人問」がよく引き合いに出されます。王績は詩の中で、故郷からきたという客に、望郷の念を吐き出すかの如く、続けざまに多くの問いを発します。それは純粋な情感の発露で有り、その素朴な表出は魅力でもあるのですが、やはり王維のただ一つの問いに込められた思いには及ばない気がします。 「寒梅著花未?」に込められた思いは、読者に想像の余地を残し、芸術鑑賞の喜びを味わわせてくれるとも言えるでしょう。
この冬、特殊な事情で帰国がかなわず、初めて異国の地で長い休暇を過ごします。故郷で一人暮らす高齢の父は、電話しか使えません。耳がほとんど聞こえなくなった父とのやりとりは「元気ですか?」と問うことくらいです。父が大切にしている庭に臘梅が咲いたかどうか、今日は尋ねてみたいと思います。
臘梅の香り誘うふるさとに一人暮らせり米寿の父は cogito
らふばいの香り誘ふ故郷に一人暮らせり米寿の父は cogito |