王維の詩「畫」に思う
畫 王維
遠看山有色, 近聽水無聲。
春去花還在, 人來鳥不驚。
遠くを見れば 山に色有り、近くに聴けば 水に声無し。
春が去っても 花はまだ在り、人が来ても 鳥は驚かず。
「畫」は、唐代の詩人王維の五言絶句。
南宋山水画の祖とも言われる王維が、画を鑑賞して作った詩です。
画の中の遠くにある山には、(本来はぼんやりしているはずなのに)美しい色が施されている、しかし、画に近づいても本来聞こえるはずの水の音は聞こえてこない。春が過ぎ去り花は散ってしまったのに、画の中ではまだ色鮮やかな花が咲いている、しかし、人が近くに来ても画の中の鳥は驚かない。
画の中には、画家が理想とする自然の姿が写しとられており、それは自然そのものではありません。山水を愛し、山水画を得意とした詩人ですが、理想と現実を冷徹に見つめる姿を感じ取ることができます。
さらに、「詩佛」ともいわれ、仏教に深く精通していた詩人の画に対する向き合い方だけでなく、人生観や世界観を示しているようでもあります。
芸術作品を鑑賞する時に何を感じるかは、人それぞれでしょう。
また同じ人でも、異なる時期、異なる心情を抱いて作品に向き合えば、また違ったものを受け取るでしょう。
さらに、自分自身が創作してみると、作品を通して感じる世界は異なってくるように思います。
この詩は、様々に思いを巡らせてくれます。
吾の裸体晒すかのごと作品を並べて明日の開館待てり cogito
中国:義務教育教科書「語文」1年(上)p.67