中国人は知識に飢えている?

最近、中国では斬新な実体書店が増えています。

吉林省長春市にある書店は、ユニークなインテリアからネット上で人気を集め、多くの市民が読書や書籍購入に訪れていると中国メディアが伝えています。

 

上海では、2020年12月24日に日本の蔦屋書店の上海1号店がオープンしました。これに先立ち10月には杭州に中国大陸1号店がオープンしています。

日本の書店の中国進出だけでなく、中国国内では、今斬新でおしゃれな書店が次々とできており、中国人の「本を読みながら過ごすおしゃれな憩い空間」になっています。

 

この背景には中国政府の後押しがあります。

政府は2016年から「全民閲読(国民読書)運動」を展開し、国民全体の文化レベルを底上げしようとしており、政府によるテナント使用料の補助や、税の優遇措置などにより、オンライン書店の登場で苦境に立たされていた実体書店が徐々に復活しつつあります。

 

南京には「先鋒書店」というおしゃれな書店があります。本店の建物は、かつては防空施設で政府の駐車場として使用されていたもので、クリスチャンであるオーナーの信仰を反映し、書店の一角には大きな十字架が飾られており、この書店のシンボルにもなっています。

世界的にも有名で、私も何度も足を運びました。

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2017年12月10日 先鋒書店にて撮影

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観光地としても人気のある「老門東」には、古い建物を利用して作ったセンスの良い「先鋒書店」2号店があり、人気スポットになっています。

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2017年12月9日 日本語科の学生と老門東を散策し「先鋒書店」2号店へ


 

これらの書店は、書籍の点数が充実しているという以外に、書棚のデザイン、ライトの当て方などにも凝っており、雑貨の販売やカフェ、クラフト教室などの習い事の場が併設されていたりします。

また、書店では、作家や翻訳者を招いてのイベントなどもよく開催され、ファンだけでなく多くの読者が集まります。

 

中国の書店には、日系の書籍が多く置かれています。

村上春樹や東野圭吾の書籍を中心として、たくさんの日本の作家の小説の翻訳本が目立つところに積み上げられています。

夏目漱石、川端康成、黒柳徹子、渡辺淳一、三島由紀夫などの本がめじろ押しで、ある程度の面積を誇る書店なら、どこに行っても必ずといっていいほど置かれています。

 

3年生の「日本文化」の授業で、学生が「東野圭吾」の作品についてプレゼンテーションを行いました。彼は、東野圭吾の小説(中国語訳)を読破しており、東野圭吾愛を熱く語り、同じく東野圭吾作品を多く読んでいる他の学生との議論が盛り上がりました。

 

友人のH先生(中国人)は現在小説を執筆中とのことで、

「中国人は日本の作家、例えば村上春樹や東野圭吾、夏目漱石、川端康成などの小説をよく読みますが、日本では中国人が書いた本はどのくらい読まれますか」と質問され、私は答えに窮しました。

日本語に翻訳され、日本の書店に平積みされている中国の小説をほとんど見たことがありません。

H先生には、自分が知る現状と翻訳者の役割などについて話をしました。

 

中国には、村上春樹作品の翻訳者として有名な林 少華(中国海洋大学教授)や施 小煒(上海杉達学院教授)を始め、日本に留学した後中国に戻り、精力的に日本文学を翻訳し中国人に紹介し支持されている優秀な翻訳者が多いです。

先日は、以前教えた学生が、中国の有名な出版社に就職が決まり、同時に日本の小説の翻訳権を得たことを嬉しそうに報告してくれました。

 

貪欲に知識や文化を吸収し、理解しようとしている中国人が多くなる中、日本人としてもっとやることがあるのではないか、今後も考えていきたいと思います。

  

<参考>                                                        

長春に「ネット人気書店」登場 吉林省--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

 

祝您有个美好的一天!(良い一日を!)