李白の詩「贈孟浩然」に思う

   贈孟浩然  孟浩然に贈る

    李白 

      
  吾愛孟夫子、 吾は愛す孟夫子、

  風流天下聞。 風流は天下に聞こゆ。
  紅顔棄軒冕、 紅顔 軒冕を棄て、

  白首臥松雲。 白首 松雲に臥す。
  酔月頻中聖、 月に醉ふて頻りに聖に中(あた)り、

  迷花不事君。 花に迷ひて君に事(つか)へず。
  高山安可仰、 高山 安んぞ仰ぐ可けんや、

  従此揖清芬。 徒だ此に清芬を揖す。

 

私が敬愛する孟浩然先生、先生の風流ぶりは天下に聞こえています。

紅顏の青年時代より官位につくことを棄て、白首の老人になるまで松雲に臥しておられる。
月に醉ってはしきりに酒を飲み、花に迷っては君に仕えようともなさらない。

高山のように高い志の先生をどうして仰ぎ見ることが出来ましょう、ただ此処から清らかな香りを拝します。

 

「贈孟浩然」は、唐代の詩人李白(701-762)の五言律詩。

敬愛する先輩詩人孟浩然に贈った詩です。

前に読んだ「黃鶴樓送孟浩然之廣陵」は、開元18年(730年)3月、孟浩然が広陵(現在の江蘇省揚州)に旅立つ際に、黄鶴楼で見送った様子を詠んだものでした。

今回の「贈孟浩然」は、開元27年(739年)、李白が襄陽近郊の鹿門山で隠遁生活をしていた孟浩然を訪ねた時のものです。この時李白は孟浩然に会うことができず、この詩を残したと言われています。

 

李白は交友を楽しんだ詩人ですが、特にこの孟浩然と賀知章との交流を好みました。彼らに共通するのは「風流」を解すること。この詩でも孟浩然の「風流」は天下に聞こえていると称賛しています。

 

孟浩然は李白より12歳年長で、生涯官に仕えませんでした。「春暁」に代表されるような、自然を愛し、超然とした詩を作っています。李白は孟浩然の詩境のみならず、生き方そのものに傾倒していたようです。この詩で孟浩然を理想の隠者として描いており、李白の孟浩然に対する崇敬の情が並々ならぬものであったことが伝わってきます。

 


「風流」とは何か。そのとらえ方は様々でしょう。創作された詩文や画、書を鑑賞し、さらに作者が生きた時代とその処し方を紐解くことで、彼らが追い求めた風流を感じたいと思います。

 

 

    茶室にて暫し俗世を忘るるに水芙蓉の紅時を告げおり  cogito

 

 

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