王維の詩「送別」に思う

   送別  王維

  下馬飮君酒, 馬を下りて君に酒を飲ましむ
  問君何所之。 君に問ふ「何の所へか之く」と
  君言不得意, 君は言ふ 「意を得ず
  歸臥南山陲。 帰りて南山の陲に臥す」と

  但去莫復問, 「但去れ 復た問うこと莫からん
  白雲無盡時。 白雲 盡くる時無し」

 

馬を下りて、あなたに酒を勧めよう。あなたにお訊ねする「どこへ行こうとなさるのか」。あなたはおっしゃる「思うようにいかなかった。(故郷へ)帰って、終南山のほとりで隠棲する」と。「ただもう、ひたすら行きなさい。もう二度とは、問いません。どこへ行っても、白雲は尽きることなくいつまでも流れています。」

 

「送別」は、唐代の詩人王維の五言古詩。

前に、王維が遙か辺境に旅立つ友人との別離を詠んだ「渭城曲」を読みました。

この詩「送別」は、王維が誰を送ったのか定かではありません。

詩人は、友人との問答を淡々と描いています。

友人はうまくいかない生活(社会)に見切りをつけ、故郷に帰って隠遁生活をすると告げます。

「意を得ず」の言葉に多くの意味を感じ取ったのでしょう。詩人は深追いすることなく、白雲はどこへ行っても、いつまでも流れていると伝えます。

「白雲」は、超俗的な趣を持ち、神仙、隠逸を暗示する語でもあります。

王維自身もこの後、終南山で半官半隠の生活を送っています。

 

多くを問わず、静かに見送ろうとする姿に、詩人の友人への心配りと愛情、そして友人の隠遁生活への励ましなど、無尽の思いを感じ取ることができる詩です。

 

  日本で会おうと高き声のして郝君の乗るバスはゆきたり  cogito

 

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