王之渙の詩「送別」に思う

    送別    王之渙

 楊柳東風樹,青青夾御河。
 近來攀折苦,應爲別離多。

 

楊柳が春風に吹かれ、河を挟んで青々としている。

(しかし)最近は、登って枝を手折るのもたいへんである、

きっと別離が多いためだろう。

 

「送別」は、唐代の詩人王之渙(688-742)の五言絶句。

この詩は、王之渙が別れを詠んだものです。

詩人は、長安城外での友人との別れに際し、友人に送るため柳の枝を手折ろうと思います。季節は春、河の両岸の柳並木は風に吹かれ、青々と鮮やかです。

しかし、実際に近寄ってみると、簡単に手折れる枝がないことに気付きます。

そして、最近はここで多くの人が別れていったのだという感慨に至ります。

中国では、古代、別れに際し柳の枝を手折って輪にし、旅立つ人に送る習慣がありました。

そのため、柳は別離の象徴となっています。

 

 

3月、花が咲き、緑も鮮やかになる季節です。しかし、日本は別れの季節でもあります。

中国の学生にとって、日本の象徴としてまず思い浮かべるのが「桜」です。

日本語を学びはじめたばかりの学生は、日本へ行って映画やドラマでみた桜のある風景を見てみたいと言います。

中国では、6月(或いは7月)に学校を卒業するため、春の桜の季節に日本人が多くの別れを経験することを知りません。

日本独特の学期制や卒業式、入学式などの話をすると、「桜」に対する認識が変わり、益々日本で桜を見てみたいと思うようです。

 

日本人にとっての「桜」のイメージは、中国人にとっての「柳」と重なるのではないでしょうか。

 

ただ、日本の「桜」は、出会いの季節も彩ってくれることを忘れてはなりません。

昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、日本各地で入学式が延期されたり、中止になったりしました。

今年は、満開の桜が新入生を迎えてくれることを祈りたいと思います。

 

中国は、すでに南方から桜開花の便りが届いています。

 

 桜咲き浮き立つ思ひ伝へたし めぐりめぐりて君に電話す  cogito

 

 

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