中国は、定年年齢引き上げの課題にどう取り組むのか

中国で「定年年齢の引き上げ」が議論されています。中央政府は「第14次五カ年計画(2021‐25年)」と「2035年までの長期目標」において、「法定の定年退職年齢の延長を漸進的に実施する」と明確に言及しました。

中国では、平均寿命が新中国成立初期の約40歳から2019年には77.3歳まで上昇しているにもかかわらず、法定退職年齢は男性60歳、女性幹部55歳、女性従業員50歳で、新中国成立初期から約70年経った現在まで調整されたことは一度もない、とのこと。

具体的な実施時期や定年年齢が何歳になるかなどはまだ示されていません。

中国でも定年年齢の引き上げへ その理由は?いつから?--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

 

 

2月26日にも中国国務院新聞弁公室が雇用と社会保障の状況に関する記者会見を行いましたが、「具体的な改革プランを検討中で、世界で通行するやり方や経験を参考にするとともに、中国の現実的な国情、文化的伝統、歴史的沿革を十分に考慮して、最大公約数を導きだし、プランの科学的な実行可能性と安定的な実施を確保する」としています。

中国は定年延長の具体的改革プランを検討中--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

 

 

中国政府が、定年延長は必要だとしつつも、具体的プランがなかなか打ち出せない背景には、国情や文化があるという弁明は理解できます。

 

中国では、50代、60代は、その上の世代の介護の重要な担い手です。

伝統的な「親孝行は最大の美徳」とする考え方から家族介護が当然とされています。

また、50代、60代は孫世代の重要な養育者でもあります。

30代、40代の働き盛りの世代が、定年退職した親に子育てを託す傾向が強く、親たちもそれを楽しみにさえしています。

定年年齢が引き上げられれば、中国の少子化に拍車がかかる可能性もあります。

 

 さらに、産業構造の高度化が進む中で、中国は高学歴化も急速に進んでおり、雇用における新陳代謝を促し、経済発展を継続していくためにも定年年齢を引き下げたくないという実情もあるでしょう。

 

中国では、定年退職した50代のエネルギーいっぱいの女性たちが広場ダンスを楽しみ、60代の男性たちが、公園をジョギングするなど、旅行や趣味・スポーツを楽しむ姿が多く見られ、お金と時間をもった彼らは消費者としても注目されています。

 

 

私の周りの大学関係者にも定年に関する意見を聞いてみました。 

大学講師も現況は男性60歳、女性55歳で定年となります。

副教授(准教授)以上は、希望すれば定年が延長されます。

民办(私立)の学校は、さらに定年年齢が高いようで、公立大学を退職し、私立で教鞭を執られている先生もいらっしゃるようです。

 

私の所属する外国語学部は、女性の先生方が多い学部です。

大半の女性の先生方からは、定年(55歳)ですぐにやめたいとの答えが返ってきました。

57歳の准教授も、「請われて仕事を続けているが、早く辞めたいと思っている」とのことでした。

 

定年後にやりたいことは、旅行や習い事(伝統文化や楽器演奏)が多く、定年後の計画を着々と進めておられる先生もいらっしゃいました。

 

人生100年時代、「50代で仕事を辞め、後の人生はどうするの?」などと考えてしまいますが、明るく楽しむことに長けた中国の人々は、人生の意義を仕事だけに見いだすのではなく、多方面に“創新”しているようにもみえます。

 

今後の展開を見守りたいと思います。

 

祝您有个美好的一天!(良い一日を!)