裴迪の詩「送崔九」に思う

 送崔九   崔九を送る 

   裴迪

歸山深淺去, 山に歸り 深淺に去り,

須盡丘壑美。 須らく 丘壑の美を盡すべし。

莫學武陵人, 學ぶ莫れ 武陵の人を,

暫遊桃源裏。 暫く游べ 桃源の裏に。

 

隠棲のため故郷の山奥に行くのなら、山や谷の自然の美しさを堪能すべきである。陶淵明が書いた『桃花源記』に出てくる武陵の漁人に倣ってはいけない。しばらくは、桃源郷で過ごしなさい。

 

「送崔九」は、唐代の詩人裴迪の五言絶句。

出典によっては「崔九欲往南山馬上口號與別」と題するものもあります。

裴迪は、早くから詩人王維と親交があり、終南山で十数年共に隠棲生活を送り、唱和しました。王維から詩と思想両面の影響を強く受けたといわれ、山水詩を得意としました。

この詩は、裴迪がこれから故郷に戻って隠棲生活をしようとする友人崔九(王維の妻の弟)に送ったものです。

隠遁生活を送るのであれば、腰をすえて自然を堪能すべきだ。現実世界が気になって、さっさと還ってきてはいけない、初心を忘れるなと諭しています。

 

第2句の「丘壑」は、陶淵明の『帰去来兮辞』に出てくる美しさを暗示し、第3句の「武陵人」は、同じく陶淵明の『桃花源記』の中の人物から来ています。

 

口語的で飄々とした表現と古典をふまえた積極的な助言の背後には、詩人自身の現実世界への不満とともに、友人に対する深い愛情が感じられます。

詩の背景を知ることで、さらにこの詩の含蓄する意味を解することができそうです。

それが漢詩を鑑賞する面白さともいえるでしょう。

長い道です。一歩一歩進んでいきたいと思います。

 

 世の中の大情況は変へがたく 窓開け放ち寒気吸ひこむ   cogito

 

 

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