劉長卿の詩「送上人」に思う

送上人   劉長卿

孤雲將野鶴, 孤雲 野鶴を將る,

豈向人間住。 豈人間に向ひ住せんや。

莫買沃洲山, 沃洲山を買ふこと莫れ,

時人已知處。 時人 已に知れる處。

 

空に浮かぶ一片の雲は野鶴を送る。このような野鶴がどうして俗世に住めましょう。

あなたのような孤高の人は沃洲山を買ってはなりません(隠居の地としてはなりません)。すでに世の人々が知るところですから。

 

「送上人」は、唐代の詩人劉長卿の五言絶句。

この詩は、友人の霊澈上人を送った時の詩。

前に読んだ詩『送靈澈』と同じ人物です。

 

沃洲山(よくしゅうざん)は、仏教や道教の聖地で、現在の浙江省新昌県の東、天台山脈と四明山脈の間にあり、天姥山に通じています。

晋代の高僧の支遁が、かつてここに沃洲寺を建て、鶴を放って馬を飼っていたといわれ、道家では第十二福地とされています。

 

沃洲山は名山として知られ、景勝地としても人気があり、当時すでに多くの僧侶が修行生活を送っていました。しかし、本来の修行ではなく、名を揚げるための修行であることも多かったようです。

そのため、詩人で自身も俗世を離れた生活をしていた劉長卿は、霊澈上人に、この場所はあなたのような高潔で孤高の方の修行の場にはふさわしくないと諭しながら見送っています。

 

非常に率直な表現の中に、劉長卿と霊澈上人の関係の深さを感じます。

また、超俗した真の修行者であってほしいという劉長卿の霊澈上人に対する願いもくみ取れます。

相手をよく知る知音であるがゆえに、必要な言葉があり、別れがあるのかもしれません。

 

  投げ出して急ぎ回収する言葉 君の心に疑の文字残し  cogito

 

 

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