孟浩然の詩「送朱大入秦」に思う

送朱大入秦  朱大の秦に入るを送る 

        孟浩然

遊人五陵去, 遊人 五陵に去る

寶劍值千金。  宝剣 値千金
分手脫相贈, 手を分つとき 脱して相贈る

平生一片心。 平生 一片の心

 

君は遠く五陵へと発つ。この宝剣は千金に値する。

私は君との別れに際し、これを贈る。

平素から君に寄せている一片の誠意の印として。

 

「送朱大入秦」は、唐代の詩人孟浩然の五言絶句。

この詩は、孟浩然が友人朱大の旅立ちを見送った際に作った詩です。

朱大という人物の詳細は不明で、孟浩然との関係もよくわかっていません。

秦は長安の地、五陵は長安北郊の地名で漢の高祖(長陵)・恵帝(安陵)・景帝(陽陵)・武帝(茂陵)・昭帝(平陵)の陵墓がありました。

 

詩人は、友人の旅立ちに際し、誠意の印として千金にも値する宝剣を贈ると言います。

この「寶劍值千金」は、曹植(192-232 曹操の第三子で三国時代の著名な文学者)の五言詩「名都篇」に由来します。

ここでは刀そのものの価値だけでなく、与えるものが他にないことを強調するために使われています。 その価値は、計り知れないといえるでしょう。

大事な宝剣を「平生 一片の心」として友人に差し出す詩人の友愛と惜別の思いの深さが感じられます。

 

別れに際し、何を贈るのか、何も贈らないのか、難しい選択です。

 

 

「タン君ベトナムへ還る」

   美しい日本語で吾語らむか君の眼の輝くを見て

   日本語は美しいですと君言ふを両手で受け取る壊れぬやうに

     「ぞ(・)うさんのじ(・)ょうろ」が言へぬ君とする朝一番の発音練習

      じゃん拳で鬼になりたるタン君に声だけ大きく豆を撒きたり

      お茶席で茶碗を回す君の所作日本人より日本人らし

      桜湯の桜カメラに撮り納め親に見せむと君の笑ひぬ

   葉桜の緑の頃に来し君は花を愛でずに国へ還りぬ        cogito

 

 

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