李白の詩「 送友人」に思う

   送友人 李白

青山橫北郭, 青山 北郭に横たわり

白水遶東城。 白水 東城を遶る
此地一為別, 此の地 一たび別れを為し

孤蓬萬里征。 孤蓬 万里に征く
浮雲遊子意, 浮雲 游子の意

落日故人情。 落日 故人の情
揮手自茲去, 手を揮って 茲より去れば

蕭蕭班馬鳴。 蕭蕭として 班馬鳴く

 

青々と草木の茂る山が、城郭の北側に横たわり、澄んだ水が、城市の東側を巡っている。この地で一度別れることになれば、一つだけ風に飛びさすらう飛蓬のように、万里の道を征くことになる。浮雲は、旅立つ人の心であり、落日は旧友の感情である。手を振って、ここより去り行こうとすれば、ヒヒーンと、別れる馬が嘶く。 

「蕭蕭班馬鳴」は、『詩経・車攻』の「蕭蕭馬鳴」に由来する。

 

「送友人」は、唐代の詩人李白(701-762)の五言律詩。

この詩は、李白が友人を見送った際の送別詩です。友人が誰であるかは、わかっていません。

李白は交友を楽しみ、多くの送別や相聞の詩を書いていますが、中でもこの「送友人」は有名で、中国の教科書でも取り上げられています(義務教育教科書「語文」8年下p.138)。

 

詩人は、まず送別の場の精美な風物を描きます。横たわる青山と巡る白水の色彩と静動の対比が鮮やかです。山は静かに黙し、水は遠くに流れゆく、離別の情景を暗示しています。

次に「浮雲」と「落日」を対比し、詩人の感情が表白されます。今ここでひとたび別れれば、友は浮雲のように万里をさすらう。対する私(詩人)は、夕陽が名残を惜しむように友と別れがたい。

しかし、離別の時は訪れ、手を振り、友は行き、馬の嘶きが静かに響きます。(まるで馬は2人の心情を知っているかのように。)

美しい余韻が残り、尽きない感慨を覚える詩だといえます。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社, 344-345页

 

  心臓の鼓動と時計の秒針がそろひて響く真夜のロビーに   cogito  

 

 

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