元稹の詩「寄贈薛濤」に思う

  寄贈薛濤

    元稹

錦江滑膩蛾眉秀, 錦江の滑膩 蛾眉の秀、

幻出文君與薛濤。 幻出す 文君と薛濤。

言語巧偷鸚鵡舌, 言語 巧みに倫む 鸚鵡の舌、

文章分得鳳凰毛。 文章 分ち得たり 鳳凰の毛。

紛紛辭客多停筆, 紛紛たる詞客 多く筆を停め、

個個公卿欲夢刀。 個個の公侯刀を夢みんと欲す。

別後相思隔煙水, 別後の相思 煙水を隔つ、

菖蒲花發五雲高。 菖蒲花發いて 五雲高からん。

 

滑らかな錦江と秀美な峨眉山を有する蜀の地(現在の四川省成都付近)、そこに卓文君と薛濤は幻のように輩出された。

彼女らの言語は鸚鵡の舌を盗んだかのように巧みであり、文章は鳳凰の毛を分けてもらったかのように美しい。

多くの文人詩人たちは、彼女たちの才に及ばないのを恥じて筆を絶ち、一人一人の三公九卿は、蜀の地に来ることを夢見る。
薛濤と別れて後、はるか遠く雲と河水を隔てていても私は彼女を思い続けている。その恋い慕う思いは、庭の菖蒲のように開花し、空の瑞雲のように高まる。

 

「寄贈薛濤」は、唐代の詩人元稹(779-831)の七言律詩。

この詩は、女流詩人薛濤に贈った詩です。

 

元稹は元和4年(809年)3月、監察御史に任命され、東川に赴きます。そこで当時すでに名を馳せていた女流詩人薛濤に一目惚れし、2人は恋仲になったといわれます。しかし、1年も経たないうちに彼は翰林学士に任じられ赴任していきます。

薛濤の詩人としての才能や人となりを巧みな比喩で称賛し、別離後も思念の情が深まっていく様子を切々表現しています。

参考: https://so.gushiwen.org/shiwenv_ee25e1632be4.aspx

 

前に薛濤の「送友人」を読みました。その詩では誰を送ったのか明らかにしていませんが、この元稹の「寄贈薛濤」は、その詩への返答ともとれます。

 

では、この詩を受け取った薛濤は、どのような思いに至ったのでしょうか。

探ってみたいと思います。

 

 逢ひみての後の心は揺蕩ひて打ちてはデリート繰り返しをり  cogito

 

 

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