白居易の詩「南浦別」に思う

 南浦別  白居易

南浦淒淒別,西風裊裊秋。

一看腸一斷,好去莫回頭。

 

西風が裊裊(じょうじょう)と吹く秋の日、南側の水辺には寂しい別れの雰囲気が漂う。

友を見送り、ひとたび振り返れば断腸の思いがこみ上げる。

友よ、行きなさい、もう振り返らないようにしましょう。

 

「南浦別」は、唐代の詩人白居易の五言絶句。

この詩は、二十字の短く淡々とした表現のなかに、深い惜別の情が表現されています。

 

南浦は、送別の地点であり、古人はよくここで親しい友人を送り、詩にも詠んできました。

《楚辞・九歌・河伯》にも登場し、「長亭」と同じく送別の場所の代名詞になっています。

 

詩人は、西風が裊裊と吹く秋の日に、友人の旅立ちを見送ります。

中国語で読むと「淒淒」と「裊裊」の音の響きが、別れの寂しさを倍増させます。

詩人は、離れて行く友の舟を見送ったあと振り返り、耐えがたい離別の情に駆られます。

しかし、その思いをぐっと耐えて、「振り返らずに、安心して行きなさい」と友を力強く見送るのです。

読む者の心の琴線に触れ、忘れがたい印象を残します。

 

日本は卒業のシーズンを迎えています。

親しんだ人や場所との別れに際し、断腸の思いに至ることもあるでしょう。

しかし、互いに前を向いて進んで行くしかありません。

その先に、きっと素晴らしい出会いがあると信じて。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社, 980-981页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_434c0f9ea3ff.aspx

 

 

埠頭には百合鷗五羽居並びて赤き嘴水に写せり  cogito

 

 

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