王昌齡の詩「送柴侍禦」に思う

   送柴侍禦

     王昌齡

流水通波接武岡,送君不覺有離傷。(流水:沅水とする出典もある)

青山一道同雲雨,明月何曾是両郷。

 

流れる河の水や波は武岡に続いている。君を見送っている今、別れ行く悲しみは感じない。

山水で隔てられた両地ではあるが、青山がまとう雲も潤す雨も同じであり、両地で見上げる名月も同じではないか。

 

「送柴侍禦」は、唐代の詩人王昌齡の七言絶句。

この詩は、詩人が龍標(現在の湖南省黔陽縣)に左遷されていた時期に、武岡(現在の湖南省西部)に向かう友人を見送った際に詠んだものです。

王昌齡は、友情を重んじた詩人であり、多くの送別詩を詠んでいますが、その中でも異色の詩と言えます。

 

友が向かう先は隣接した地。両地は同じ雨や雲に覆われ、同じ月を愛でることもできる。今ここで別れたとしても2人の心も同じくひとつである、と詩人は励まします。

友の旅立ちに際し、軽快で力強く送り出そうとする表現の裏に、強い絆とともに深い寂しさも感じさせます。

 

この詩の下二句「青山一道同雲雨,明月何曾是両郷」は、昨年2020年2月、中国が新型コロナウイルスの感染拡大で混乱していた時期に、京都府舞鶴市が友好都市の大連市に贈った医療物資に記されていたものです。

http://jp.eastday.com/node2/home/latest/zr/u1ai179447_K863.html

 

この時期、日本から中国に送られた支援物資には、同じような内容の詩や成語が添えられ、多くのメディアで取り上げられました。

 

1年が経過した今、日本と中国がおかれている状況は、ずいぶんと様変わりした感があります。

しかし、日本は今夏にオリンピック・パラリンピックを控えており、中国もまた来年には冬期オリンピック・パラリンピックを控えてもいます。

今一度、「一衣帯水」の両国は、互いを尊重しつつ協働することが大事ではないかと、この詩を読んで改めて感じます。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,151-152页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_8ca2131b3450.aspx

 

 

  友とゐて茶の源流を追ひかけぬ 日中間の歴史ひもとき  cogito

 

 

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