王昌齡の詩「送魏二」に思う
送魏二
王昌齡
醉別江樓橘柚香, 醉ひて 江樓に別るれば 橘柚 香しく,
江風引雨入舟涼。 江風 雨を引きて 舟に入りて涼し。
憶君遙在瀟湘月, 憶ふ 君が 遙か瀟湘の月に在るを,
愁聽清猿夢裏長。 愁へ聽かん 清猿の夢裏に長きを。
川辺の高殿で、(酒宴を開き)酒に酔いつつ君を送ろうとすると、柑橘の香りが漂ってきた。
川風は雨を吹き込ませ、舟に入ってきて涼しく感じられる。
別れたのちの君のことに思いをいたす、君が遙か遠く瀟湘の月の下で、もの悲しげな猿の鳴き声を、夢うつつの中で、愁いの心をもって聴くのではないかと。
「送魏二」は、唐代の詩人王昌齡の七言絶句。
この詩は、王昌齡が友人(魏二)を見送った際に詠んだ送別詩です。
詩人と友人の関係は定かではありません。
詩人は、前二句で友を送る送別の酒席の様子を描き、後二句では、友が別れた後に遭遇するであろう境遇に思いをいたしています。
詩人は柑橘の香りが漂う爽やかな秋の日に、酒に酔いつつ友の旅立ちを見送ろうとします。しかし、ふと別れた後の友の様子に思いを馳せます。友はこの先旅する中で、月下に独り寂しく猿の鳴き声を聞きながら眠りにはいり、長い夜を過ごすのではないかと。それは、残された詩人自身の寂しさとも重なったのでしょう。
前半の美しい実景と後半の寂しい想像の世界が、詩の境界を広げ、惜別の情の強さを際立たせています。
王昌齡は交友を大切にし、多くの送別詩を残していますが、この詩は構成に特徴があり、評価の高い詩の一つです。
参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,148-149页
https://so.gushiwen.org/shiwenv_f3c1ce88f8af.aspx
もう少し歩いてみようと君の言う 退紅帯びたる更衣の夕 cogito