李嶠の詩「風」に思う

       風  李嶠

解落三秋葉,能開二月花。

過江千尺浪,入竹萬竿斜。

 

(風は、)秋に吹いて金色の木の葉を散らし、春に吹いては美しい花を咲かせる。

河を渡れば大きな波を起こし、藪に入りては多くの竹を傾がせる。

る。

「風」は、唐代の詩人李嶠(645-714)の五言絶句。

この詩は、風の力を詠ったものです。

 

風は、自然の対象として、目に見えず、手の届かないものであり、生きている個人が感じるか、外部の物の変化によってしか知ることができません。

この詩には「風」という言葉は出てきませんし、風の外形や外見的な特徴は、直接には表現されていません。

風の作用を受けて外物の本来の質や状態が変化することを描写し、風の優しさや強さを表現しています。

 

風の温かさや魅力を改めて感じさせてくれる詩です。

 

李嶠は、15歳にして五経に通じ、20歳で進士に合格します。武后のとき(690-705)に同鳳閣鸞台の宰相となりますが、玄宗の世(712-756)に滁州(現在の安徽省)に左遷され、70歳で亡くなります。文才に恵まれ、初期には詩人の駱賓王や王勃と交遊し、その後、蘇味道とともに「蘇・李」と並び称されます。杜審言、崔融、蘇味道と共に「文章四友」とも呼ばれます。

日本では、平安朝以来、李嶠の詠物詩が読まれ、早くに中国で散佚した『李嶠雑詠』は、日本に伝わっています。空海や橘逸勢とともに三筆に数えられる嵯峨天皇が写した筆跡も残っています。

 

参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_8bc9e1cc2b8f.aspx

 

 

墨を磨るそばに風来て筆を撫ず吾を描けと私語きかけて  cogito

 

 

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