杜牧の詩「清明」に思う

      清明

             杜牧

清明時節雨紛紛,  清明の時節 雨紛紛

路上行人欲斷魂。  路上の行人 魂を断たんと欲す

借問酒家何處有,  借問す 酒家は何れの処にか有る

牧童遙指杏花村。  牧童 遥かに指さす 杏花の村

 

清明節の時期の江南は、小糠雨がよく降り、道行く人は、気が滅入ってしまう。

酒はどこで買えるかと尋ねると、牧童は遙か杏の花の咲く村を指さした。

 

「清明」は、唐代の詩人杜牧の七言絶句。

この詩は、清明節の時期に江南を旅した様子を詠んだ詩です。

清明節は、二十四節気の一つで旧暦4月5日頃に当たります。

中国では古くから墓参りや「鞜青」(郊外に遊びに出かける)の習慣がありました。

詩人は、この時、江南(長江下流の南岸一帯)を旅しており、雨に降られ、気分が晴れないままに酒を求めて、その場所を尋ねています。

 

牧童が指さした「杏花村」は実在する村の名称ではなく、杏の花が咲く場所のようです。

《江南通志》に杜牧が池州(現在の安徽省南部)の刺史として在任した際に、金陵(現在の南京)の「杏花村」を通り、酒を飲んだとの記載があり、これを指すものと思われます。

 

杜牧は晩唐の繊細な技巧的風潮を排し、平明で豪放な詩を多く残しています。この詩も難解な言葉や暗示がなく、素直に読むことができます。

詩の構成が自然で、最後に残る余韻も、この詩の魅力といえそうです。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,1212-1214页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_d3e3283daac5.aspx

 

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