白居易の詩「春詞」に思う

       春詞        白居易

低花樹映小妝樓,春入眉心兩點愁。

斜倚欄杆背鸚鵡,思量何事不回頭。

 

丈の低い花と木に閉ざされた小さな美しい楼閣は、春に入り女性の眉間に二つの愁いをもたらす。

鸚鵡に背を向けて欄干にもたれながら、何かを思案しつつも後ろを振り返らない。

 

「春詞」は、唐代の詩人白居易七言絶句。

この詩は、楼閣の中でわびしく気持ちがふさぐ春愁の女性を描きつつ、そこから抜け出そうとしない女性を風刺したものです。

 

この詩全体には、封建社会における女性の自由と幸福への願望が示されており、また、その願望があるにもかかわらず、なぜ追い求めないのかという詩人の批判とともに暗黙の反省も隠されていると思われます。

人によく馴れ、人の言葉を巧みにまねる鸚鵡に背を向けるという表現が、さらに読む者の想像をかき立てます。

短い詩ですが、登場人物が生き生きと描かれており、言葉はシンプルながら、内容は深く味わいがあります。

 

 

白居易は貞元16(800)年、29歳で進士科に及第し、官職を転々とします。

文宋・大和2(828)年2月には、刑部侍郎に昇任しますが、それを辞し、太子賓客分司東都、洛陽を中心とする河南府の長官河南尹を歴任します。

この詩は、大和3(829)年の春に書かれたものです。

当時、宮廷の宦官たちは傲慢でやりたい放題の状況にありました。

白居易の親友であった宰相の韋處厚(773~828年)が亡くなり、李宗閔は宦官と組んで宰相になろうとしていました。

また、政敵である王涯(764?-835年)は、この年の正月に山南西道の節度使に任命されています。

そのため、この春は詩人にとって非常に不愉快な季節となりました。

詩人は閉ざされた楼閣に愁いを抱えて生きながら、自由や幸福を求めつつも、そこから抜け出せず思案する女性の姿に仮託し、己の心情を表現したものといえるでしょう。

 

生命が輝く春です。

愁いをはね除け、楼を飛び出す勇気を持ちたいものです。

自分の幸せは自分の手で掴むべく、まずは小さな一歩を踏み出したいと思います。

 

参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_859af0a3b832.aspx

 

 

桎梏を逃れ来たりし大陸に右往左往す自転車こぎて  cogito

 

 

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