李商隠の詩「天涯」に思う

天涯  李商隠

春日在天涯,天涯日又斜。

鶯啼如有淚,為濕最高花。

 

春の日に、地の果てにある。地の果てに、太陽がまた沈もうとしている。

鶯が、涙があるかのように鳴いており、そのために、最も高いところに咲く花が濡れている。

 

「天涯」は、唐代の詩人李商隠の五言絶句。

この詩は、晩春の寂しさを詠んだものです。

 

木の最も高いところに咲く花とは、最後に咲く花のことであり、春の終わりを示しています。美しい花も散り、美しい季節がいってしまうことを惜しんで、鶯さえも涙しているようです。

また、最も高いところの花は、他からの庇護を得られず、雨風に耐えなければならない存在であり、詩人自身の境遇を表すものでもあります。

李商隠は、才能に恵まれましたが、唐の王朝がすでに崩壊に瀕していた晩唐という時代にあり、官僚としては不遇でした。国家や個人の前途に絶望を感じており、自然の生命の短さや人生の空虚さが、この詩の主題になっています。

春の季節への挽歌、人生への挽歌、そして、時代への挽歌ともいえそうです。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,1325-1326页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_a5b8eb647c8f.aspx

 

 

言語野の刺激足らぬか梅雨の日の啼かぬ鶯霧に包まる   cogito

 

 

 

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