戴叔倫の詩「蘇溪亭」に思う

          蘇溪亭

        戴叔倫 〔唐代〕

蘇溪亭上草漫漫,誰倚東風十二闌。

燕子不歸春事晚,一汀煙雨杏花寒。

 

蘇溪亭の外には野草が至る所に生い茂っている。誰が歌っているのか、東からの風に乗って闌干十二曲が聞こえてくる。

春はすでにやってきているのに燕はまだ帰ってこない。水辺のあたりはぼんやりと雨に煙り、杏の花が春風に吹かれて寒そうに咲いている。

 

「蘇溪亭」は、唐代の詩人戴叔倫(732-789年)の七言絶句。

この詩は、春の情景を描きつつ、帰って来ない友への思いを詠んだものです。

 

戴叔倫は建中元(780)年5月から翌年の春まで浙江東陽の令に任じられます。

「蘇溪亭」は任地の東陽からほど近いところにあり、この詩は、東陽在任中に詠んだものと思われます。江南の秀麗な春の景色を愛でながら友人への思いを婉曲に表現しています。

 

蘇溪亭の周りは春草が青々と茂っています。そこに東からの風に乗って楽譜古曲の中の闌干十二曲が聞こえてきます。

春もすでに盛りを過ぎようとしているのに、燕はまだ古巣に戻ってきていません。(友はまだ帰ってきません。)あたりは雨で煙り、杏の花も寒そうに咲いています。そこに一人立つ詩人にもむなしさや寂しさが迫ってくるのです。

 

戴叔倫は、進士に及第した後、杭州新城県の令などを務め、真面目な勤務ぶりが認められ、撫州刺史・容州刺史兼本管経略使を歴任します。のちには辞職して道士となります。

 

参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_a2d40e7e29d6.aspx

 

 

アッサムの茶葉がポットで飛び跳ねる君を待ちたるリラ冷えの朝     cogito

 

 

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