劉昚虛の詩「闕題」に思う

   闕題

    劉昚虛 〔唐代〕

道由白雲盡,春與青溪長。

時有落花至,遠隨流水香。

閑門向山路,深柳讀書堂。

幽映每白日,清輝照衣裳。

 

山道は白い雲の果てまで伸び、春の美しい景色が渓流に沿って長く続いている。

時折、落ちた花が流れてきて、遠くからでも水の香りが漂ってくる。

山道に向いた門のあたりはひっそりとしており、柳が深く生い茂った中に讀書堂はある。

陽の光が柳の枝葉を静かに通り過ぎていくたびに、清らかな光が私の衣にこぼれてくる。

 

「闕題」は、唐代の詩人劉昚虛(生没年不詳)の五言律詩。

この詩は、春の山に友人の別荘を訪ねた時に見た閑寂な風景を詠んだものです。

「闕題」とは、「題に欠ける」という意味で、本来は題があったものが、後に消失したものです。

劉昚虛は、洪州新呉県(現在の江西省宜春市奉新県)の人。唐の玄宗の開元年間に科挙に合格し、さまざまな官を歴任して崇文館校書郎となります。

 

詩人は、春の山に友人の別荘を訪ね、あたりに広がる静かで落ち着いた環境に魅了されます。

友人がどのような人で、讀書堂でどのような日々を送っているのかはわかりませんが、詩人にとっての憧れの生活ではなかったのかと想像されます。

 

情報と雑事に振り回される現代に生きる私たちも、たまにはこうした環境に身を置き、ゆったりと読書にふけってみたいものです。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,400-402页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_888beab9cc48.aspx

 

 

黎明に自ずと目覚め床を上ぐ静寂のシャワー全身に浴び   cogito

 

 

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