劉方平の詩「月夜」に思う
月夜
劉方平 〔唐代〕
更深月色半人家,北鬥闌幹南鬥斜。
今夜偏知春氣暖,蟲聲新透綠窗紗。
夜が更けて、月が傾き、人家の半分を照らし出している。北斗星は燦めき、南斗星は斜めに沈んでいく。
今夜、思いがけず春の気が暖かくなったことに気づいた。虫の音が、窓の緑の薄絹を透して聞こえてきたのだ。
「月夜」は、唐代の詩人劉方平(生没年不詳)の七言絶句。
この詩は、初春の月夜に気候が暖かくなり始めた気配を詠んだものです。
劉方平は盛唐の詩人で河南・洛陽の人。匈奴の出身。天宝年間の前期に進士試験を受けますが、思うようにいかず、潁水、汝河のほとりに隠棲し、終生にわたって仕えませんでした。
詩人は一人月夜に耽ります。夜が静かに深まっていく中、傾きかけた月が家々を照らし、澄みきった空に星が燦めきます。
一人佇む詩人の耳にふと澄んだ虫の音が届きます。初春にはまだ珍しい虫の音です。そして、春がやってきていること、少しずつ暖かくなってきていることに気付くのです。
初春の澄んだ空気、そこに冴える月の光と星の燦めき、そして微かに響く虫の音。
わずかながらも確実に春が来ていることを、五官を通して感じ取る詩人の繊細な感性を読み取ることができます。
人工的な環境の中で、日々の雑事に追われていると、季節の変化に気づきにくくなり、人間もまた自然の一部であることを忘れがちです。
たまには、自然と一体となって感性を研ぎ澄まし、自然が語る豊かな声に静かに耳を傾けることが大切でしょう。
最近は、温暖化の影響で、自然も錯乱し不調をきたしています。
敏感な自然の警鐘を軽んじてはいけないと思います。
参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,675-677页
https://so.gushiwen.org/shiwenv_cb396f21ec13.aspx
列島を自粛ムードのおほいたる皐の空に鯉の泳げり cogito