柳宗元 の詩「零陵春望」に思う
零陵春望
柳宗元 〔唐代〕
平野春草綠,曉鶯啼遠林。
日晴瀟湘渚,雲斷岣嶁岑。
仙駕不可望,世途非所任。
凝情空景慕,萬裏蒼梧陰。
平らかに広がる原野には、春草が生い茂り、緑に満ちており、明け方には遠くの林から鶯の啼く声が響いてくる。
柔らかな日差しは瀟湘の岸辺の砂洲に降り注いでおり、雲は途切れ途切れに岣嶁山の峰を漂っている。
悟りを開き、仙人になることも望めず、世間にも私を受け入れてくれる場所はない。
じっと空を見上げていると、ふとかつて、滄浪の荒野で倒れた舜帝の英霊に思いが至るのである。
「零陵春望」は、唐代の詩人柳宗元(773-819年)の五言律詩。
この詩は、任地の永州で、春景を眺めながら心情を詠んだものです。
麗らかな春の日に、平原には緑が広がり、遠くの林からは鶯の囀りが聞こえてきます。河の砂洲には柔らかな日差しがこぼれ、山の頂には広い雲が漂っています。しかし、美しい春色の中にあっても、心は晴れません。するとふとかつて自分と同じように思いを遂げられずに散っていった先人に思いが至るのです。
詩人は、永州に左遷され、約10年間をここで暮らしますが、この詩は、永州在任中に詠まれたものです。
都であり、故郷でもある長安から遠く離れた異郷で、麗らかな春色の中にいても心は晴れず、理想とはかけ離れた生活を送る詩人の望郷の念とともに諦念をも感じる詩といえそうです。
参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_dc8b293e876a.aspx
友の言ふ一年先の計画を頷きつつも杳然と聞く cogito