嚴惲の詩「落花」に思う

        落花

         嚴惲 〔唐代〕

春光冉冉歸何處,更向花前把一杯。

盡日問花花不語,為誰零落為誰開。

 

春の穏やかで美しい風光はどこへ帰っていくのかわからないままに、ただ花に向かって一杯の杯を傾ける。

終日花に語りかける、いったい誰のために咲き、誰のために散っていくのかと。しかし、花は何も話してはくれない。

 

「落花」は、唐代の詩人嚴惲(生没年不詳)の七言絶句。

この詩は、散っていく花と対峙しながら、自然の摂理の神秘さを詠んだものです。

 

時間の流れとともに、花は咲き、そして散っていきます。人もまた同じです。

科学が発達した現代においても、まだまだわからないことは多く、「謎」は残ります。

時に美しい自然と向き合い、静かにその未知なる世界に問い、思いをめぐらせると人は自ずと謙虚になれるのではないでしょうか。

改めて森羅万象の不思議な力に畏敬の念を覚え、そこに生かされる小さな自分の存在を愛おしみ、今生かされていることに感謝する、そんな時間を大切にしたいものです。

 

参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_994e66a4164a.aspx

 

 

薔薇を生けハーブを摘みて紅茶入る果たして雨はあがらぬままに  cogito

 

 

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