韓偓の詩「夏夜」に思う

        夏夜 

        韓偓 〔唐代〕

猛風飄電黒雲生,霎霎高林簇雨声。

夜久雨休風又定,断雲流月却斜明。

 

風が吹き荒れ、稲妻が走り、空には黒い雲が重く垂れ込め、大木の林を激しく襲う風雨の唸りが聞こえてくる。

夜が深け、風は止み、雨も停まった。雲の切れ間から、淡い月の光が斜めに射し込んできた。

 

「夏夜」は、唐代の詩人韓偓(842-923年)の七言絶句。

この詩は、夏の夜の風雨の変化を詠んだものです。

 

前半で、稲光がして、空は黒い雲で覆われ、激しい風雨が大木を揺らす音が鳴り響く夏の夜の様子を描写し、後半では、一転し、雷雨が過ぎ去り、雲間から月光が射し込んで穏やかさが戻った情景が鮮やかに描かれています。新たな発想と繊細な筆致で描かれた叙情的な詩といえます。

 

韓偓は、京兆万年(現在の陜西省西安)の人。龍紀元(889)年の進士で及第し、左拾遺、諫議大夫などを経て兵部侍郎、翰林学士承旨にまで昇進します。唐末の混乱期にあって王室に忠誠をつくし、昭宗に信頼されます。しかし、時の権力者でのちに帝位を奪った朱全忠に憎まれ、濮州司馬に左遷され、やがて官を辞します。その後、閩の王審知の庇護を受けるようになってその地で生涯を終えます。

 

参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_84b82eb7fc8a.aspx

 

 

青竹のはじめて昇る赤き火に昨日の嘘も共に燃やせり   cogito

 

 

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