韋応物の詩「夏花明」に思う
夏花明
韋応物 〔唐代〕
夏条緑已密,朱萼綴明鮮。
炎炎日正午,灼灼火俱燃。
翻風適自乱,照水復/複成妍。
帰視窓間字,熒煌満眼前。
夏、樹木の枝が生い茂り、緑が満ちあふれ、朱色の花の萼が明るく鮮やかである。
陽差しの強い正午、花は益々明るく輝き、まさに火が燃えているようである。
一陣の風が吹き、樹木の枝が揺れ、朱色の花が乱れ、その色彩が水面に鮮やかに照り映えている。
家に帰り窓の上の字を見ると、(外の鮮やかな光と色彩で目がくらみ)目の前が明るく光ってよく見えない。
「夏花明」は、唐代の詩人韋応物(737-792年)の五言律詩。
この詩は、真夏の灼熱の太陽の下で、鮮やかな花を愛でた時の状況を詠んだものです。
夏の太陽に照らされ、燃えるように鮮やかに咲く花、その色彩に目がくらみ、家に帰ってみると目の前が明るく光って字が読めないことに驚きます。
夏の日の経験が生き生きと表現されており、盛夏の強く輝く色彩と光を追体験することができます。
韋応物は、北周朝からの名門の家に生まれ、玄宗に近衛士官(三衛郎)として仕えます。安史の乱の後、職を失い、一旦故郷に戻りますが、その後、下級の地方官を転々としました。
786年には蘇州刺史になりますが、白居易が赴任してくると引退し、寺院に寓居します。
自然を詠う詩に巧みで、盛唐の孟浩然や王維を受け継ぐとされ、柳宗元も一括して“王孟韋柳”と並称されます。
参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_b9ac954275e5.aspx
蝉時雨背に受けつつお茶を飲む添へたる菓子の銘は清凉 cogito