于鹄の詩「巴女謡」に思う
巴女謡
于鹄 〔唐代〕
巴女騎牛唱竹枝,藕絲菱葉傍江時。
不愁日暮還家錯,記得芭蕉出槿籬。
巴(地名:現在の四川省巴江一帯)の女の子が牛の背に乗り、竹枝詞(巴渝:現在の重慶一帯の民謡)を歌いながら、ゆっくりと家に帰っていく。周囲の河には、蓮の花が咲き、菱の葉が茂っている夏の夕暮れである。
日が暮れて家がわからなくなるのを恐れる様子もない。なぜなら、家の前には一本の芭蕉の樹が、木槿(ムクゲ)でできた垣根から突き出しているのを覚えているからである。
「巴女謡」は、唐代の詩人于鹄(生没年不詳)の七言絶句。
この詩は、四川省巴江一帯に住む一人の女の子が民謡を歌いながら家に帰っていく様子を詠んだものです。
夏の夕暮れに、牛の背中に乗って民謡を歌いながらゆっくりと家に戻る様子が周辺の情景とともに描かれています。
早く家に帰った方がよいと誰かに促されても、女の子には慌てる様子もみられません。なぜなら、家の前には目印があるので、日が暮れて道に迷うこともないからです。
ゆったりとしたのどかな農村の風景と利発な女の子の様子が易しい言葉で生き生きと表現されています。
于鹄は、大歴、貞元年間に活躍した詩人で、張籍とも良く交わりました。隠遁生活を題材とした作品を多く作っています。
参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,787-788页
https://so.gushiwen.org/shiwenv_89fc3d5f7605.aspx
放課後にかごめかごめと子らの声 深き秋思に誘はれ聞く cogito