白居易の詩「賦得古原草送別」に思う

賦得古原草送別    

        白居易

離離原上草,   離離たり 原上の草,

一歲一枯榮。   一歳に一たび 枯榮す。

野火燒不盡,   野火 燒けども盡きず,

春風吹又生。   春風 吹きて又生ず。

遠芳侵古道,  遠芳 古道を侵し,

晴翠接荒城。   晴翠 荒城に接す。

又送王孫去,   又 王孫の去るを 送れば,

萋萋滿別情。   萋萋として 別情滿つ。

 

 

野原に青々と生い茂る草、毎年秋から冬にかけて草は枯れ、春にはまた生い茂る。

野火に焼かれても尽きることはなく、春風が吹けばまた生えてくる。

遥か彼方までずっと続く芳しい春の草花は、古道を覆い、晴れわたった空の下の緑の草木は、雑草に埋まった城壁まで続いている。

またしても、友が旅立って行くのを見送れば、草木が盛んに生い茂り、別れの思いでいっぱいになってくる。

 

「賦得古原草送別」は、唐代の詩人白居易(772-846)の五言律詩。

この詩は、德宗貞元3年(788年)に詩人が16歳の時に作ったものです。

科挙試験を受ける準備として、規定に沿って作った詩と言われます。

数人で詩題を指定したり、詠む部分を限ったりして作る場合、本来の詩題の前に「賦得」と付記します。

 

荒野の雑草の様に惜別の情が仮託されています。

旅立つ友への尽きない哀惜が感じられるとともに、語感に詩人の若さと純粋さを感じることもできます。

白居易は現実主義詩人として知られます。

その詩は、主題も形式も幅広く、比較的分かり易い言葉を使いながらも深い味わいがあり、現在でも多くの人々に愛されています。

その片鱗をこの詩に見ることができそうです。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社, 957-959页

https://so.gushiwen.cn/shiwenv_b7820a12ebaa.aspx

 

  

 忘却は生きる術なり歌詠むは逝きし友らと今語ること   cogito

 

 

 

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