杜甫の詩「熟食日示宗文宗武」に思う
熟食日示宗文宗武
杜甫
消渴遊江漢,羈棲尚甲兵。
幾年逢熟食,萬裏逼清明。
鬆柏邛山路,風花白帝城。
汝曹催我老,回首淚縱橫。
自分は消渇の病を持病としながら蜀地、江漢の地にいるが、まだ兵乱が続き故郷に帰れない。幾年も熟食日が訪れ、また清明節を迎えようとしている。
故郷では邙山の路に松柏が茂っているであろうが、ここの白帝城では春も盛りを過ぎ、花が風に吹かれている。
汝らは成長し、自分は自然と老いてゆく。故郷の方をふりむくと、涙が多くなっていくのである。
「熟食日示宗文、宗武」は、唐代の詩人杜甫の五言律詩。
この詩は、熟食日(寒食節)にあたって宗文・宗武の二子に示した詩です。
寒食節は、中国の伝統的な節句で、冬至から105日後、清明節の1~2日前に行われます。 この日は火や煙を禁じ、冷たいものしか口にしない習わしがありました。現代中国では、清明節に吸収され、ほとんど行われなくなっています。
杜甫が56歳の時に作った詩とされ、長子「宗文」は18歳、次子の「宗武」は15歳になっていたと思われます。
息子2人の成長を喜ぶと共に、漂泊の旅を続け、子供たちに十分な教育を施すこともできず老いていく自分の姿を愁い、息子2人の将来を案じている詩です。
詩聖とよばれる杜甫の家長として、父親としての一面を見ることのできる貴重な詩といえます。
子を持たぬ我と娘を持たぬ友目の端に追ふ振袖姿 cogito