白居易の詩「錢塘湖春行」に思う

     錢塘湖春行

         白居易

孤山寺北賈亭西,水麵初平雲腳低。

幾處早鶯爭暖樹,誰家新燕啄春泥。

亂花漸欲迷人眼,淺草才能沒馬蹄。

最愛湖東行不足,綠楊陰裏白沙堤。

 

<春の杭州西湖を行く>

北から孤山寺を回って西の貿亭を目指せば、西湖の湖水は初め平らで、雲が低く垂れている。

至る所に、やってきたばかりの鶯が日当たりのよい木を競うように求めて啼き、新たに南方から飛んできた燕が、誰の家かも知らずに春泥を嘴で運んで巣作りを始めている。

多くの花々が次々と咲き乱れて、人の目を楽しませる。若草があちこちに芽生えているが、まだ馬蹄の跡を残していない。

私が最も愛する湖東は、今の季節は出かけるのに、やや物足りない。
楊柳の緑が春の陽光に照り映えて美しく、その陰には白沙の堤がある。
この季節訪れるなら、やはり何と言っても白沙の堤であろう。

 

「錢塘湖春行」は、唐代の詩人白居易(772-846年)の七言律詩。

 

この詩は、杭州西湖(別名:錢塘湖)の春の様子を詠んだものです。

白居易は長慶2(822)年7月に杭州刺史に任命され、10月に杭州に赴きます。その後長44(824)年5月に名誉職太子左庶子東都となって洛陽に戻ります。さらに宝歴元(825)年3月には蘇州刺史に任命され、蘇州に赴任します。ですから、この詩は長慶3(823)年か長慶4(824)年の春に詠まれたものと考えられます。

白居易は、杭州在任中に西湖にまつわる詩を多く読んでいます。この詩では、春を纏う美しい西湖を生命の躍動とともに描いています。

 

西湖は西施が入水自殺したという伝説が残されており、その神秘的な美しさは見る者を圧倒します。2011年にユネスコの世界文化遺産に指定されてからは、観光客がさらに増加しています。美しい湖畔は季節や時間によって表情を変え、多くの人々を魅了し続けています。

私も数度訪れましたが、平日でも多くの人々が散策を楽しんでいました。

 

西湖には「西湖十景」と呼ばれる10か所の観光スポットがあります。

西湖の北側には「断橋残雪」が見られるスポット「白堤」があります。雪が無い時季でも、道のわきに植えられた柳と湖のコントラストが対照的で見る者を魅了します。

「白堤」につながる島が「狐山」で、東側には「平湖秋月」があります。秋の夜が最も絶景とされていますが、日中も穏やかな水面を楽しめます。

 

白居易は、春の季節、ここ「白堤」がお気に入りの場所だったようです。

もうすぐ始まる労働節の連休には、間違いなく多くの人が訪れ、賑わうことでしょう。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,986-987页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_af218ed70405.aspx

 

 

水面を忍者の如く滑り去るあめんぼの群れ甘き香残し   cogito

 

 

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