窦叔向の詩「夏夜宿表兄話旧」に思う

      夏夜宿表兄話旧

      窦叔向 〔唐代〕

夜合花開香満庭,夜深微雨酔初醒。 

遠書珍重何曾達,旧事淒涼不可聴。

去日児童皆長大,昔年親友半凋零。

明朝又是孤舟別,愁見河橋酒幔青。

 

夜も深まり小糠雨が降る中、庭には百合の花の香りが満ち、最初の酔いも程良く醒めてきた。

(従兄にかつてのことをいろいろと話したいが何から話し始めたものか。)

かつて混乱していた時代には(親友に託した)貴重な手紙も届かず、(話さなければならないことは多いが、かといって)家の中の苦しい状況も(いまさら)聞かせたくもない。

月日が経ち、当時子供だった者もみな成長し、かつて親しかった友も半分は亡くなってしまった。

明日は早朝にまた一人舟に乗って遠方に赴かなければならない。

河の橋の下に酒屋の青い旗が見えるが、明日はあそこで別れなければならないのだ。

 

「夏夜宿表兄話旧」は、唐代の詩人窦叔向(約729-約780年)の七言律詩。

この詩は、夏の夜に、久しぶりに再会し、また次の日には別れなければならない従兄に、昔のことを思い出しながら話をする、その情景と心情を詠んだものです。

 

窦叔向は、扶風平陵(現在の陝西省咸陽)の人。宦官の家に生まれ、進士に挙げられ、出世の道を歩みますが、後に左遷の憂き目に遭います。この詩は、地方官を務めていたときに詠まれたものですが、時期などの詳細はわかっていません。

 

久しぶりに従兄と再会し、積もる話はあるが、何から話し始めたら良いのかわからないという戸惑い、楽しく語り合いたいが、なかなか適当な話が見つけられない焦り、しかし、久しぶりに心許せる従兄と共に酒を酌み交わせる喜び、そして明日にはまた別れねばならない悲しみなどいくつもの交差する心情が素直に吐露され、共感を誘います。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,727-728页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_dd5f535a5e65.aspx

 

 

そうそうと共感できる人ありてダージリンティーの水色の冴ゆ  cogito

 

 

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