李白の詩「静夜思」に思う

     静夜思  

    李白

  牀前看月光  牀(床)前 月光を看る

  疑是地上霜  疑うらくは是れ地上の霜かと

  挙頭望明月  頭(こうべ)を挙げて明月を望み

  低頭思故郷  頭を低して故郷を思ふ

 

床に明るい月の光が差し込む、まるで地上に降りた霜のようだ。頭を挙げて明月を望み、頭を垂れて故郷を思う。

 

「静夜思」は、唐代の詩人李白の五言絶句。26歳の時、旅先の揚州での作といわれています。月を望んで望郷の念を覚えるという内容は、共感を呼びやすく、長く多くの人に親しまれてきました。

 

月光をまるで地上に降った霜のようだとする表現に、若き李白の孤独な心情が読み取れます。

原作は「明月」ではなく、「山月」だったと言われ、「明月」が詩中に二度出てくることから、中国でもその芸術性に対する議論が絶えません。中国で詠い継がれる中で「明月」に落ち着いていったようです。

 

この詩は、中国では、義務教育教科書「語文(国語)」の1年(下)に登場します。日本でも漢文の教科書に登場し、良く知られた詩です。日本では原作の「山月」が伝わっており、漢文の教科書で習った記憶があります。

 

18歳で大学に進学して以来、ずっと故郷を離れて暮らしてきましたが、海外で暮らすようになって、殊に多く思い出し口ずさむのがこの詩です。

唐代の偉大な詩人と同じ境界に至るのは難しいですが、詩人をより身近に感じるときでもあります。

家人は遠くとも、詩人は近し。孤独を分かち合えるのは、ありがたいです。

 

  中秋に李白とともに杯を挙げて望みし金陵の月  cogito

 

 

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