薛濤の詩「  春望詞四首    其一」に思う

     春望詞四首      其一

           薛濤

 花開不同賞, 花開くも 同に賞せず、

 花落不同悲。 花落つるも 同に悲まず。

 欲問相思處, 問はんと欲す 相思の處、

 花開花落時。 花開き花落つるの時。

 

花が咲いても共に賞でることがかなわず、花が散っても共に悲しむことができない。

お尋ねしたい、あなたと共に、花開き、花散る時を過ごすことのできるところを。

 

「春望詞四首·其一」は、唐代の女流詩人薛濤(768?-832)の五言絶句。同題4首のうちの1首です。

この詩は、長く会えないでいる人(夫・恋人)に会いたいと願う女性の気持ちを詠んだものです。

薛濤が、特定の相手に向けて作った詩かどうかは定かでありません。

 

百花繚乱の心ときめく春色を前にして、女性は明るく生き生きとした春の光景に心を動かされます。

花の命は短く、その色は失われやすく、散りやすい。共にその花を観賞したいと思う相手は手の届かないところにいて、一緒に喜んだり、悲しんだりすることはかなわず、相手への恋しさは、よりいっそうつのります。

思わず、あなたのいるところへ駆けだして行きたい、だからその場所を教えてほしい、と請いたくなる。

共にいることできない切なさが表現された詩です。

 

人生を共に歩みたいと思った相手と、若く美しく輝く時を共に享受できることは喜びでしょう。特に古代の女性が輝ける時間は短かったと思われます。それゆえ、よりいっそうその時をそばにいたいと願う気持ちは強かったのではないでしょうか。

また、人生に艱難辛苦はつきものです。その苦しく辛い時を共に乗り切ることができれば、2人の関係はさらに深まり、共にあることの幸せは、かけがえのないものになるでしょう。

良い時も悪いときも、全てを共有したい相手は手の届かないところにいる、その悲しみが淡々と美しく語られているようでもあります。

 

イギリスのことわざに「結婚は悲しみを半分に、喜びを二倍に、そして生活を四倍にしてくれる」というものがあります。

理想の結婚生活ともいえるでしょう。

もちろん、現実はこううまくはいきませんが。

 

参考:https://so.gushiwen.org/shiwenv_2a0404c99e48.aspx

 

 

  幼少に植物学者になりたいと夢見し君に花の名教ふ  cogito

 

 

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