福島原発事故の汚染水海洋放出決定に対する中国の反応

 

日本政府が、13日、福島原発事故の汚染水を海洋放出により処理することを決定したことに対し、中国外交部は談話を発表しました。

日本の隣国であり利害関係国である中国は、この件に対し重大な懸念を表明するとしています。

http://j.people.com.cn/n3/2021/0413/c94474-9838640.html

 

また、外交学院国際関係研究所の周永生教授は、「日本がこのようにするのには、主に3つの原因がある」とし、以下のように指摘しています。

第1に、現在は多くの国の人々の反対やメディアの反対などはあるものの、法律のレベルにまで達した事例がない。そのため目下の反対の声はある種の『弱い反対』であり、強制力を持っていない。

第2に、日本の行動に対して、現在は主に周辺の東アジア諸国が反対しているだけで、欧米諸国の反対の声はそれほど大きくない。

第3に、日本が国際原子力機関(IAEA)において大きな勢力を持っていること。日本政府が派遣した職員が長きにわたり事務局長を勤め、日本は大きな影響力を持っている。そのため、IAEAには日本に加担する傾向がある。

http://j.people.com.cn/n3/2021/0413/c94476-9838613.html

 

この決定に対しては、学生からも意見を求められました。

中国での関心の高さを感じます。

日本の責任ある言動を期待します。

                                                                      

祝您有个美好的一天!(良い一日を!)

 

李商隠の詩「天涯」に思う

天涯  李商隠

春日在天涯,天涯日又斜。

鶯啼如有淚,為濕最高花。

 

春の日に、地の果てにある。地の果てに、太陽がまた沈もうとしている。

鶯が、涙があるかのように鳴いており、そのために、最も高いところに咲く花が濡れている。

 

「天涯」は、唐代の詩人李商隠の五言絶句。

この詩は、晩春の寂しさを詠んだものです。

 

木の最も高いところに咲く花とは、最後に咲く花のことであり、春の終わりを示しています。美しい花も散り、美しい季節がいってしまうことを惜しんで、鶯さえも涙しているようです。

また、最も高いところの花は、他からの庇護を得られず、雨風に耐えなければならない存在であり、詩人自身の境遇を表すものでもあります。

李商隠は、才能に恵まれましたが、唐の王朝がすでに崩壊に瀕していた晩唐という時代にあり、官僚としては不遇でした。国家や個人の前途に絶望を感じており、自然の生命の短さや人生の空虚さが、この詩の主題になっています。

春の季節への挽歌、人生への挽歌、そして、時代への挽歌ともいえそうです。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,1325-1326页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_a5b8eb647c8f.aspx

 

 

言語野の刺激足らぬか梅雨の日の啼かぬ鶯霧に包まる   cogito

 

 

 

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TikTokが再びダウンロード数で世界1位

今月9日、米調査会社のセンサータワーが発表したデータによると、北京字節跳動科技有限公司(バイトダンス)のショート動画共有アプリ「抖音(Tik Tok)」は2021年第1四半期(1-3月)の世界モバイルアプリケーションダウンロード件数ランキングで前期に続いて首位に立ち、このうち3月のダウンロード件数は5800万回を超えたということです。

http://j.people.com.cn/n3/2021/0412/c94476-9838146.html

 

TikTokで「China(中国)」と検索すると、関連する動画の総閲覧件数が130億回を超え、中国の伝統工芸、民俗文化、食文化、風俗習慣、中国の特別天然記念物であるジャイアントパンダなどに関するショート動画コンテンツは、世界のユーザーたちが中国を知る窓口になったとも伝えています。

 

YouTubeで中国から海外に進出し、高い人気を誇るビデオブロガーの李子柒さんは、19年10月にTikTokで中国の伝統や日常の暮らしを伝える作品を発表するようになり、現在はTikTokに200万人以上のフォロワーがいます。

 

2020年7月16日、李さんの動画のYouTubeにおけるチャンネル登録者数が1140万人に達し、中国語チャンネルにおけるチャンネル登録者数最多記録保持者として「ギネス世界記録2021」に掲載されています。

http://j.people.com.cn/n3/2021/0203/c94475-9815955.html

 

中国国内では、基本的にはYouTubeなどにアクセスできません。

しかしながら、李子柒さんのYouTube発信については、中国メディアで肯定的に報じられており、中国にとって有益な情報であれば、良いということなのでしょう。

 

祝您有个美好的一天!(良い一日を!)

杜牧の詩「歎花 / 悵詩」に思う

歎花 / 悵詩    杜牧

自是尋春去校遲,不須惆悵怨芳時。

狂風落盡深紅色,綠葉成陰子滿枝。

 

自分は春を尋ねて行くのが遅くなってしまったが、花が咲くのが早すぎたと怨めしく思い嘆くこともあるまい。

激しい風が深紅の花を吹き落としてしまったが、緑の葉が生い茂って陰を作り、その陰にはたくさんの実が付いているではないか。

 

「歎花」は、唐代の詩人杜牧の七言絶句。

この詩は、花見に行くのが遅くなって、花の美しい時期を逃してしまったことを詠ったものです。

この詩には、物語があります。

《唐阙史》や《唐摭言》の記載によれば、杜牧は、友人とともに湖州に遊んだ際に、年は十余歳と思われる女の子を見初めます。杜牧は、その母親と十年経ったらこの女の子を娶ることを約します。その後14年経って、杜牧は湖州刺史として赴任しますが、その時にはその女の子はすでに他の男性に嫁ぎ、2人の子供をもうけていることを知るのです。

この話の信憑性は定かではありませんが、この詩は、花の時期を逃したことに対する嘆きに仮託し、男女間の情を詠んだものとも言えそうです。

詩人は比喩を使いながら複雑な心情を表現しており、深い味わいのある詩となっています。

 

参考:《唐诗鉴赏辞典 新一版》2013年,上海辞书出版社,1207-1208页

https://so.gushiwen.org/shiwenv_50baaefb4e33.aspx

 

 

一年後ひと月先さへ見へなくて手探りつづく春霞の日  cogito

 

 

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中国の国花は牡丹?

 

中国では、牡丹の季節を迎えています。

今月10日、第39回中国洛陽牡丹文化祭が開幕しました。

洛陽は国内外で名を馳せる「千年の古都、牡丹の町」です。

http://japanese.cri.cn/20210411/3648ba92-ad32-821a-f309-725145bf2a2b.html

 

また、山東省にある曹州牡丹園でも、国際牡丹文化観光まつりが開催され、多くの観光客で賑わっているようです。

http://j.people.com.cn/n3/2021/0410/c94638-9837801.html

 

中国花卉協会が国花に関する世論調査をおこなったところ、回答者の約8割が牡丹に投票しました。以下、第2位は梅、第3位は蘭、第4位は蓮の花となっています。

http://j.people.com.cn/n3/2019/0724/c94638-9600079.html

 

中華人民共和国には、法定の国花はなく、現在選定中のようです。

世論調査の結果も関係部門が国花を選定する際の参考にされるようです。

 

個人的には、やはり富貴をあらわす牡丹が、最も中国らしいような気がします。

 

祝您有个美好的一天!(良い一日を!)

 

劉禹錫の詩「送春詞」に思う

 送春詞

   劉禹錫

昨來樓上迎春處, 昨來 樓上 春を迎へし處,

今日登樓又送歸。 今日 樓に登りて 又た歸るを送る。

蘭蕊殘妝含露泣, 蘭蕊の殘妝 露を含みて泣き,

柳條長袖向風揮。 柳條の長袖 風に向かひて揮る。

佳人對鏡容顏改,    佳人 鏡に對すれば 容顏 改まり,

楚客臨江心事違。 楚客 江に臨めば 心事 違ふ。

萬古至今同此恨,    萬古 今に至るも 此の恨を同じうし,

無如一醉盡忘機。    如ともする無し 一醉して盡く機を忘れん。

 

つい先日この楼閣の上で春を迎えたように思うが、今日は又ここに登って(春を)送っている。

蘭の花蕊(花のしべ)は、粧が崩れ、露を含んで泣いているようであり、柳の枝は長い袖を風に向かって振っているようである。

美しい人は鏡に対して容貌が変ったことを感じ、楚の国から来た旅人は川岸で、心が事がらと違うことを知るのだ。

昔から今に至るまで、この恨みは同じであり、いかんともしがたい、少し酒を飲んで、すっかりと俗念を忘れてさっぱりするよりほかにあるまい。

 

「送春詞」は、唐代の詩人劉禹錫の七言律詩。

この詩は、晩春の情景を詠んだものです。

 

春をつい先日迎えたと思いきや今日はまたその春を見送っていると、歳月が過ぎゆくことの速さを訴えます。

晩春の季節、花は凋れて美しい姿を留めず、まるで春が去るのを悲しみ泣いているようです。

柳はその長い枝を風になびかせ、長い袖を振って春が去るのを見送っているようです。

美人は、鏡と向き合えば、歳月とともに自分の容貌が変わり、美が衰えていくのを感じます。

楚の国から来た旅人は、自分の思いとは裏腹に世間の事情に翻弄されざるをえません。

古今このような恨みは同じであり、言っても仕方がないので、酒でも飲んで酔って忘れるしかないと諦念するのです。

 

楚の国から来た旅人とは、屈原を指し、ここでは詩人が自嘲を込めて詠んでいます。

当時、詩人は左遷され、孤独と寂寥感を感じており、その愁いがこの詩に反映されています。

詩人は、異郷の地に左遷され、志を実現することが困難な立場に置かれた屈原と自分を重ねます。

詩全体は、対句が美しく構成されており、暗示も巧みに使われています。

自らの情緒を風景に溶け込ませ、心に溜まった不満や抑鬱した情感を表現しています。

情緒的であると同時に楽観的で開放的な詩人の姿勢を表現しているといえるでしょう。

 

この詩を読んで、「ニーバーの祈り」を思い出しました。

知恵を持って、一日一日を大切にいきたいものです。

 

参考:https://zhuanlan.zhihu.com/p/64441502

http://home.interlink.or.jp/~suno/yoshi/poetry/p_niebuhr.htm

 

 


所在なき異国の日々にさ迷いて口付く母語は怒濤のごとし  cogito

 

 

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中国、柳絮飛散に関する注意喚起

本格的に柳絮が飛散する季節を迎え、北京市では注意喚起を行っています。

 

柳絮(白い綿毛をもった柳の種子)が舞う時期は一般的に4月上旬から5月下旬まで、およそ50日間続きます。

北京市疾病予防管理センターは8日に健康を守るための注意を打ち出し、「柳の綿が飛散するのは一般的に昼間が最も多く、アレルギーのある人はできるだけ昼間の外出を避けてほしい」と呼びかけています。

飛散する綿状の物質はアレルギー反応を引き起こし、鼻から入ると強い刺激となって、鼻水、咳、ぜんそくなどを引き起こしたり、かゆみ、目の充血など皮膚のアレルギー反応を引き起こしたりすることがあり、深刻な場合は気道の感染や呼吸困難を引き起こすといいます。

http://j.people.com.cn/n3/2021/0410/c94475-9837808.html

 

北京市では、2000年より柳絮の飛散対策を開始し、木の種類を替える、雄株を接ぎ木するといった手段により、市街地内の雌株の柳は激減しているようです。

また、人の密集する地域の柳に飛散防止の注射を行ったり、枝を短く切り、樹冠を水で高圧洗浄することで、飛散を防止したりしています。

http://j.people.com.cn/n3/2016/0331/c95952-9038397.html

 

 

中国では、柳絮の飛散はかなり広範囲で見られます。

風に舞う様子は幻想的で、まさに春の風物詩です。

 

私は、日本にいたとき、漢詩の中で柳絮に出会い、ずっと見てみたいと思っていました。

中国に赴任し、山東省の大学キャンパスで始めて柳絮が舞う光景を目にしたとき、本当に興奮し、歓喜したことをはっきりと思い出します。

 

しかし、アレルギーのある人にとっては、恨めしい存在です。

北京のみならず、各地で対策が進んでいるようですが、切り倒されるのは少し残念な気がします。

うまく折り合いをつける方法をみつけてほしいものです。

 

祝您有个美好的一天!(良い一日を!)