漢詩と和歌

裴迪の詩「送崔九」に思う

送崔九 崔九を送る 裴迪 歸山深淺去, 山に歸り 深淺に去り, 須盡丘壑美。 須らく 丘壑の美を盡すべし。 莫學武陵人, 學ぶ莫れ 武陵の人を, 暫遊桃源裏。 暫く游べ 桃源の裏に。 隠棲のため故郷の山奥に行くのなら、山や谷の自然の美しさを堪能すべきであ…

李白の詩「 勞勞亭  」に思う

勞勞亭 李白 天下傷心處, 天下 心を傷ましむるの處, 勞勞送客亭。 勞勞 客を送るの亭。 春風知別苦, 春風 別れの苦なるを知り, 不遣柳條青。 柳條をして 青からしめず。 天下で最も人の心を悲しませる処、それは行く人を送る勞勞亭である。 春風は別離の…

王維の詩「山中送別」に思う

山中送別 王維 山中相送罷, 山中 相ひ送ること罷みて, 日暮掩柴扉。 日暮 柴扉を掩づ。 春草明年綠, 春草 明年綠なるも, 王孫歸不歸。 王孫 歸るや 歸らざるや。 山中友を送り、(遠く行ってしまったので)見送ることをやめ(自宅へ戻り)、日が暮れてき…

王之渙の詩「送別」に思う

送別 王之渙 楊柳東風樹,青青夾御河。 近來攀折苦,應爲別離多。 楊柳が春風に吹かれ、河を挟んで青々としている。 (しかし)最近は、登って枝を手折るのもたいへんである、 きっと別離が多いためだろう。 「送別」は、唐代の詩人王之渙(688-742)の五言絶…

王維の詩「送別」に思う

送別 王維 下馬飮君酒, 馬を下りて君に酒を飲ましむ 問君何所之。 君に問ふ「何の所へか之く」と 君言不得意, 君は言ふ 「意を得ず 歸臥南山陲。 帰りて南山の陲に臥す」と 但去莫復問, 「但去れ 復た問うこと莫からん 白雲無盡時。 白雲 盡くる時無し」 …

王維の詩「渭城曲」に思う

渭城曲 王維 渭城朝雨浥輕塵, 渭城の朝雨 軽塵を浥す 客舍青青柳色新。 客舎青青 柳色新たなり 勸君更盡一杯酒, 君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒 西出陽關無故人。 西のかた 陽関を出ずれば 故人無からん 渭城の明け方の雨が土埃を湿らせ、旅舎窓外の柳も青…

孟浩然の詩「送杜十四之江南」に思う

送杜十四之江南 杜晃進士の東呉に之くを送る 孟浩然 荆吳相接水爲鄉, 荊呉相接して水を郷と為すも 君去春江正淼茫。 君去る春江 正に淼茫たり 日暮孤舟何處泊, 日暮 孤舟 何れの処にか泊する 天涯一望斷人腸。 天涯一望 人の腸を断つ 荊と呉の地は、相接し…

李白の詩「贈孟浩然」に思う

贈孟浩然 孟浩然に贈る 李白 吾愛孟夫子、 吾は愛す孟夫子、 風流天下聞。 風流は天下に聞こゆ。 紅顔棄軒冕、 紅顔 軒冕を棄て、 白首臥松雲。 白首 松雲に臥す。 酔月頻中聖、 月に醉ふて頻りに聖に中(あた)り、 迷花不事君。 花に迷ひて君に事(つか)…

李白の詩「黃鶴樓送孟浩然之廣陵」に思う

黃鶴樓送孟浩然之廣陵 黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る 李白 故人西辭黃鶴樓, 故人 西のかた黄鶴楼を辞し 煙花三月下揚州。 煙花三月 揚州に下る 孤帆遠影碧空盡, 孤帆の遠影 碧空に尽き 唯見長江天際流。 惟だ見る 長江の天際に流るるを 古くからの友…

崔顥の詩「黃鶴樓」に思う

黃鶴樓 崔顥 昔人已乘黃鶴去, 昔人已に白雲に乗りて去り 此地空餘黃鶴樓。 此の地空しく余す 黄鶴楼 黃鶴一去不復返, 黄鶴一たび去って復た返らず 白雲千載空悠悠。 白雲千載 空しく悠悠 晴川歷歷漢陽樹, 晴川歴歴たり 漢陽の樹 芳草萋萋鸚鵡洲。 芳草萋…

杜甫の詩「春日憶李白 」に思う

春日憶李白 杜甫 白也詩無敵, 白や 詩に敵無く, 飄然思不群。 飄然 思ひ群ならず。 清新庾開府, 清新なるは 庾開府, 俊逸鮑參軍。 俊逸なるは 鮑參軍。 渭北春天樹, 渭北 春天の樹, 江東日暮雲。 江東 日暮の雲。 何時一樽酒, 何れの時か 一樽の酒, …

李白の詩「早発白帝城 」に思う

早発白帝城 早(つと)に白帝城を発す 李白 朝 辞 白 帝 彩 雲 間, 朝(あした)に辞す白帝彩雲の間 千 里 江 陵 一 日 還。 千里の江陵一日にして還(かえ)る 両 岸 猿 声 啼 不 住, 両岸の猿声啼いて住(や)まざるに 軽 舟 已 過 万 重 山。 軽舟已(…

王昌齡の詩「芙蓉樓送辛漸」に思う

芙蓉樓送辛漸 芙蓉楼にて辛漸を送る 王昌齡 寒雨連江夜入吳, 寒雨 江に連なって 夜 呉に入る 平明送客楚山孤。 平明 客を送れば 楚山孤なり 洛陽親友如相問, 洛陽の親友 如し相問わば 一片冰心在玉壺。 一片の氷心 玉壺に在り 冷たい雨が長江に降りしきり…

王維の詩「竹里館」に思う

竹里館 王維 獨坐幽篁裏, 独に坐す 幽篁の裏、 彈琴復長嘯。 琴を弾じて復た長嘯す。 深林人不知, 深林 人知らず、 明月來相照。 明月 来りて相照らす。 一人静かな竹林に坐り、琴を弾き、また声を長く引いて歌う。 深林の奥(のこの楽しみ)を誰も知らな…

李商隠の詩「夜雨寄北」に思う

夜雨寄北 夜雨 北に寄す 李商隠 君問歸期未有期, 君 歸期を問ふも 未だ 期有らず, 巴山夜雨漲秋池。 巴山の夜雨 秋池に漲る。 何當共剪西窗燭, 何か當に共に西窗の燭を剪りて, 卻話巴山夜雨時。 卻って巴山夜雨の時を話すべき。 君はいつ帰るかと尋ねる…

孟郊の詩「遊子吟 」に思う

遊子吟 孟郊 慈母手中線, 慈母 手中の線, 遊子身上衣。 身上の衣。 臨行密密縫, 行に臨んで 密密に縫う, 意恐遲遲歸。 意に恐る 遅遅として帰らんことを。 誰言寸草心, 誰か言う 寸草の心, 報得三春暉。 三春の暉に報い得んと。 慈しみ深い母は手中の…

賀知章の詩「 回鄕偶書 二首」に思う

回鄕偶書 二首 賀知章 其の一 少小離家老大回、鄕音無改鬢毛摧。 兒童相見不相識、笑問客從何處來。 少小家を離れ老大にして回る、鄕音改まる無く鬢毛摧る。 兒童相い見て相い識らず,笑ひて問う「客何れの處從り來る」と。 若い時に故郷を離れて、歳をとっ…

駱賓王の詩「詠鵝」に思う

詠鵝 駱賓王 鵝,鵝,鵝, 鵝 鵝 鵝, 曲項向天歌。 曲項 天に向ひて歌ふ。 白毛浮綠水, 白毛 綠水に浮き, 紅掌撥清波。 紅掌 淸波を撥(か)く。 鵞鳥を詠む 駱賓王 鵞鳥、鵞鳥、鵞鳥よ。(「ガァ、ガァ、ガァ」鳴き声の擬声音(中国語:é)とも取れる。 …

張繼の詩「楓橋夜泊 」に思う

楓橋夜泊 張繼 月落烏啼霜滿天, 月落ち 烏啼いて 霜天に滿つ, 江楓漁火對愁眠。 江楓漁火 愁眠に對す。 姑蘇城外寒山寺, 姑蘇城外の寒山寺, 夜半鍾聲到客船。 夜半の鐘聲 客船に到る。 月は落ち、烏が啼き、霜は空に満ちて、岸の楓樹と漁火が旅の愁いに…

劉禹錫の詩「歲夜詠懷」に思う

歲夜詠懷 劉禹錫 彌年不得意,新歲又如何。 念昔同遊者,而今有幾多。 以閑為自在,將壽補蹉跎。 春色無情故,幽居亦見過。 年を経るごとに思い通りにならなくなる、新しい年はどんな年になるのか。 昔、共に遊んだ(志を同じくした)友たちを懐かしく思うも…

王維の詩「畫」に思う

畫 王維 遠看山有色, 近聽水無聲。 春去花還在, 人來鳥不驚。 遠くを見れば 山に色有り、近くに聴けば 水に声無し。 春が去っても 花はまだ在り、人が来ても 鳥は驚かず。 「畫」は、唐代の詩人王維の五言絶句。 南宋山水画の祖とも言われる王維が、画を鑑…

賈島の詩「尋隱者不遇」に思う

尋隱者不遇 賈島 松下問童子, 松下 童子に問えば 言師採藥去。 言う 師は薬を採らんとして去れり 只在此山中, 只だ 此の山中に在らん 雲深不知處。 雲深くして 処を知らず 隠棲の友人を尋ねたが不在、松の下で弟子の童子に聞けば、師は薬草を採りに行かれ…

孟浩然の詩「春暁」に思う

春暁 孟浩然 春眠不覺曉, 春眠 暁を覚えず 處處聞啼鳥。 処処 啼鳥を聞く 夜來風雨聲, 夜来 風雨の声 花落知多少。 花落つること知る多少ぞ 春の眠りの心地よさに、目覚めれば、知らぬ間に夜が明けていて、ここかしこから鳥の声が聞こえてくる。昨夜聞いた…

元稹の詩「行宮」に思う

行宮 (唐)元稹 寥落古行宮, 寥落たり 古の行宮 宮花寂寞紅。 宮花 寂寞として紅なり 白頭宮女在, 白頭の宮女在り 閒坐說玄宗。 閒坐して玄宗を説く さびれた故の離宮、そこにはひっそりと紅の花が咲いている。白髪の宮女が静かに坐して、ありし日の玄宗…

李白の詩「静夜思」に思う

静夜思 李白 牀前看月光 牀(床)前 月光を看る 疑是地上霜 疑うらくは是れ地上の霜かと 挙頭望明月 頭(こうべ)を挙げて明月を望み 低頭思故郷 頭を低して故郷を思ふ 床に明るい月の光が差し込む、まるで地上に降りた霜のようだ。頭を挙げて明月を望み、頭…

王維の詩「鹿柴」に思う

鹿柴 鹿柴(ろくさい) 王維 空山不見人 空山(くうざん)人を見ず 但聞人語響 但だ 人語(じんご)の響きを聞く 返景入深林 返景(はんえい)深林に入り 復照青苔上 復た 青苔(せいたい)の上を照らす ひっそりと静まりかえった山の中に人影は見あたらない…

王之渙の詩「 登鸛雀楼」に思う

登鸛雀楼 鸛雀楼(かんじゃくろう)に登る 王之渙 白 日 依 山 尽, 白日、山に依りて尽き 黄 河 入 海 流。 黄河、海に入りて流る。 欲 窮 千 里 目, 千里の目を窮めんと欲し 更 上 一 層 樓。 更に一層の楼に上る。 鸛雀楼に登って望めば、太陽は西山により…

白居易の詩「問劉十九」に思う

問劉十九 劉十九に問う 白居易 綠螘新醅酒, 綠螘 新醅の酒 紅泥小火壚。 紅泥の小火壚 晩來天欲雪, 晩來 天 雪ふらんと欲す 能飮一杯無。 能く一杯を飲むや無や 私のところに新たに醸し、濾過しない綠螘(りょくぎ)の酒があり、その上紅泥(こうでい)の…

王 翰の詩「涼州詞」に思う

涼州詞 王 翰 葡萄美酒夜光杯, 葡萄の美酒 夜光の杯、 欲飲琵琶馬上催。 飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催す。 酔臥沙場君莫笑, 酔うて沙場に臥す 君笑うこと莫れ、 古来征戦幾人回。 古来征戦 幾人か回る。 白玉の杯に葡萄酒を満たし、今正に杯を挙げんと…

唐代の詩「金縷衣」に思う

金縷衣 唐 杜秋娘 勸君莫惜金縷衣, 君に勧む 金縷の衣を惜しむ莫れ、 勸君惜取少年時。 君に勧む 少年の時を惜しみ取るべし。 花開堪折直須折, 花開いて折るに堪えば直ちに須く折るべし、 莫待無花空折枝。 花無きを待って空しく枝を折る莫れ。 君に勧む、…